彼女は下級生の頃から、その美しさは目立っていて。
ヒロインを与えられることが多かったよう。

おそらく地声も低く、高い声を出すことがとても難しい喉の持ち主だったのだろう。
ヒロインとして歌を歌う際には、自信なさげな喉を締め付けるようにか細い声を出すことが精一杯のようだった。

天性の美声を持たない役者にとっては、歌のレッスン、ボイストレーニングは必須ではあるけれど、かなりの出費が必要で…きっと宝塚のお給料だけではやっていけないのが実情…。

声がよくて歌がうまい役者が好きな私は、彼女を語るときには「絶望的にヒロイン歌唱ができない娘役」…として語ってしまう。

だけど、サヨナラ公演での伶美うららはヒロインだった。
高音の歌唱はできないけれど、しっかりとヒロインとして存在していた。

神々の土地での、あの芝居は彼女だからこそできた芝居。イリナとして唯一ドミトリーと対峙した時は仕草や声色で揺れる感情を表現する彼女の芝居は、素晴らしかった。
ショーでは着こなしが難しい赤いドレスも自分のものとし。低音歌唱で大人の女の喪失感を歌い上げていた。

どうして、彼女をトップにしなかったのか?
その思いしか残らない。

実咲凜音の退団がエリザベートであれば、双頭の鷲から宙組のヒロインとして存在することもできたはず。
朝夏まなとの退団を見送り、真風との新たなコンビを組み数作で退団…。
今更嘆いても仕方ないが、本当に惜しい。

劇団の歴史上には、トップ娘役として名前は残らないけれど。ファンの心には、美しい娘役・伶美うららは刻まれました。



上田久美子先生の言葉を引用して。





さようなら、美しい人。